SL人吉の紹介

2024(令和6)年3月24日(日)掲載

快速「SL人吉」

 大畑駅に行くには「いさぶろう・しんぺい」(略称 いさしん)に乗るのが気軽で楽しいです。そのいさしんに人吉駅側で接続している列車のひとつに、快速「SL人吉」がありました。いさしん(人吉駅~吉松駅間)もSL人吉も普通列車なので、青春18きっぷ+指定席で乗車できるお気軽観光列車コンビとして人気でした。
 一応臨時列車扱いで。いさしんや鳥さん(かわせみ・やませみ)みたいに毎日運転ではありませんでした。主に土休日と大学の春・夏休みに合わせた感じの平日に走っていました。青春18きっぷ期間は特に人気が高く、指定席券が入手しにくい列車でした。

 しかし、2020(令和2)年7月3日(金)に発生した「令和2年7月豪雨」の影響で、肥薩線八代駅~人吉駅~吉松駅間の線路が流され、壊滅状態になりました。肥薩線を走れなくなったSL人吉は、走る舞台を鹿児島本線鳥栖駅~熊本駅間に舞台を写し、肥薩線沿線の宣伝をしながら走り続けました。

 そして2024(令和6)年3月23日(土)、熊本駅~博多駅間往復を最後に定期運行から外れました。翌24日(日)は招待客を乗せて熊本駅~八代駅間を走り引退しました。

 「SL人吉号」は、1988(昭和63)年10月9日から年数回臨時列車として登場しましたが、ここでは2009(平成21)年4月25日に客車をリニューアルして再登場した「SL人吉」を紹介します。


8620形蒸気機関車

 SL人吉の主役は8620形蒸気機関車の58654号機です。1922(大正11)年11月18日生まれのおじいさんです。山口県生まれの九州育ちで、1975(昭和50)年3月31日に人吉機関区で廃車となりました。

 その後は解体はされずに矢岳駅に併設された「人吉市SL展示館」にD51-170号機と一緒に展示されていましたが、1987(昭和62)年7月4日に快速「SLあそBOY」として奇跡の現役復活をとげました。
 (復活SLとしては最古参です。)

 2022(令和4年)11月18日に 鹿児島本線 熊本駅~八代駅間を「SL58654百歳号」として走りましたが、寄る年波には勝てず(車体の老朽化・交換部品の調達の難しさ)、2024年3月で廃止となりました。


SL人吉用50系700番台客車

 SL人吉用の客車は1978(昭和53)年から5年間作られた、普通列車用の客車です。当時は客車では珍しい自動ドアでした。車両の両端に車掌室とトイレが付いたオハフ50、客室だけの中間車オハ50、それぞれの寒冷地仕様オハフ51、オハ51。他には荷物車のマニ50・スユニ50がありました。

 そんな昔の客車をSL人吉用に大改造。車掌室・ドア・窓・3号車のトイレの位置はそのままに、客室内を大改造(原型はとどめていません)して誕生しました。そういった理由があり、座席の位置と窓の位置があっていなかったり、座席の間の幅が一定でなかったります。

 3両編成で、1号車 オハフ50-701(展望室・トイレ付)、2号車 オハ50-701(売店付)、3号車 オハフ50-701(展望室・トイレ付)と固定されています。58654に引かれない時は、ディーゼル機関車に引かれながら臨時列車として活躍しています。


2009年8月30日撮影

 熊本駅で発車を待つSL人吉の主役、8620形蒸気機関車です。愛称は8620なのでハチロクです。

2013年4月14日撮影

 それでは、乗車しましょう。

2013年4月14日撮影

 人吉駅側1号車の展望室です。ハチロクのお尻が見えますね。

2013年4月14日撮影

 1号車の車内です。車両の前後でシートのモケットの色が違います。これは、2号車・3号車も同様です。

2013年4月14日撮影

 2号車の車内です。売店はありますが、トイレはありません。トイレは1号車・3号車の連結して直ぐの所にありますので安心です。

2013年4月14日撮影

 2号車の売店です。入線後直ぐに販売準備が始まりました。

2013年4月14日撮影

 3号車の車内です。1~3号車の車両中央には列車の模型が展示された棚があります。

2013年4月14日撮影

 3号車の展望室です。1号車の展望室とは少しデザインが違います。

 部屋の向こうに写っている黒いディーゼル機関車は、熊本車両センターから熊本駅まで引っ張ってきたDE10-1195です。

2013年4月14日撮影

 1号車の座席です。1番狭い席をチョイスしました(え?)。横幅ではなく足下が狭いのです。向かい合わせで座るのなら、足が当たる距離には して欲しくなかった(と言うのが本音)です。

 テーブルの大きさは全席一緒なので、それで狭いかどうか分かります。この折り畳み式テーブルの席が、一番狭いです。この席は、1号車と3号車にあります。
 仲間や家族等ではいいでしょうが、一人で乗って他人と乗り合わせた場合、妙に気まずい雰囲気になります。

 あ、もちろん個人的感想です。

2013年4月14日撮影

 3号車の座席です。2番目に狭い席…というか、これが標準の大きさです。折り畳みでないテーブルが目印です。1号車と3号車にあります。
 座席定員の確保というのが、足下が狭かったり普通だったりする理由なのでしょうね。

2013年4月14日撮影

 2号車の写真です。2号車は全席座席間の幅が1・3号車と比べて広めです。2人用席も4人用席も2号車お勧めです。リニューアル後に2号車だけ座席幅と売店が魔改造(と言うか作り直し?)されて快適になりました。

 座席間の足下の広さのおさらい。
 狭い← 1・3号車の折り畳みテーブルの席 / 1・3号車の折り畳めないテーブルの席 / 2号車全席 →広い

2013年4月14日撮影

 2人用の席なら、足下の広さはあまり関係無いかもしれません。こちらも折り畳み式で1号車と3号車にありますが、狭さを感じません。テーブルを使わない時はいいかも。

2013年4月14日撮影

 こちらは2号車。安定の広さです。

2009年8月30日撮影

 天井には「86」という数字がデザインされた欄間(すみません天井に近い部分の鉄格子の正式名称知りません)があります。
 (しまった。逆向きの写真しかない…(汗)。)

2009年8月30日撮影

 各車両にはデットスペースに飾り棚なんかを作り込んでいます。こちらは1号車のトイレ横。

 (棚なんか付けずに窓のままだったら暗く狭く感じたりしないんだけどなぁ…とは私個人の感想なので聞き流して下さい(きっと共感してくれる人はいるハズ))。

2009年8月30日撮影

 上記の棚の下の部分。「SL人吉 沿線観光之図」と書いてあります。

2009年8月30日撮影

 2号車の売店と客室の仕切り部分。売店横らしく人吉名産の球磨焼酎が展示されています。

2009年8月30日撮影

 3号車のトイレの向かい。改造前はロングシートだった部分。「SL文庫」という名前が付いており、誰も座って本を読める場所です。自由席としては使えません。基本全車指定席です。

2009年8月30日撮影

 発車まで後10数分。乗客も集まってきました。

2009年8月30日撮影

 ホームの自販機もSL人吉デザインになっています。

2009年8月30日撮影

 発車時刻です。

2009年8月30日撮影

 2号車売店の背中=外側のデザイン。至る所でハチロクの自己主張をしています。

2009年8月30日撮影

 SL=昔の列車という演出なのか、昔ながらの手差しのサボ(行き先表示やら号車案内やら座席種別やら表示する板)になっています。

2009年8月30日撮影

 こちらは1号車入口。2号車と違い、ドアが改造前のスライド式です。

2009年8月30日撮影

 機関車の運転席。夏は暑くて地獄だそうです(運転手談)。

2009年8月30日撮影

 窓から車内の様子を撮影。素人目には何をどう動かしたら走るのか分かりません。運転手さんってすごい。

2009年8月30日撮影

 リニューアル後直ぐの乗車証明書です。SL人吉は快速列車なので、青春18きっぷと指定席で乗車出来ます。(…って、冒頭でも書きましたね。)

 細かい話ですが、指定席券の列車名が「SL人吉」になっています。後で関連した話をしますね。正にどうでもいい話かもしれませんが(汗)。

2009年8月30日撮影

 やはり売店は利用すべき(言い切った)でしょう。早速食べ物を買いに行きます。

2017年4月24日撮影

 おごっつお弁当です。名前は方言の「ごちそう」から来ています。2009年デビュー時は500円。最期に食べた2017年は620円だったおにぎり弁当です。事前予約が必要でしたが、当日分も車内で売っていました。

2017年4月24日撮影

 内容はおにぎり2つに煮付けです。全ての食材が人吉産というこだわり弁当です。もちろん美味しいです。

2017年4月24日撮影

 焼酎アイス、340円です。内容は焼酎で作ったアイスとバニラアイスが半々になっています。「武家蔵」は人吉市内に観光用武家屋敷の名前です。小さい所ですが、喫茶店「喫茶ぶけくら」も併殺されており、そこの名物です。
 焼酎と銘打っていますが、アルコール度数は1%以下で、お酒の弱い人や子供でも食べられます。

2009年8月30日撮影

 八代駅3番ホームに到着しました。見物人も集まって来ます。

2009年8月30日撮影

 見物人以外にも駅弁売りさんが登場しました。取りあえず何か買いましょう(…買うのね)。

2009年8月30日撮影

 阿蘇赤うし弁当、1100円です。「SL人吉」ですが赤うしも同じ熊本県産つながりで買ってみました。

 繋がりで言えば人吉市内も流れている球磨川の鮎料理「鮎屋三代」でしょうけど、この時はお肉な気分でした。

2009年8月30日撮影

 見事な牛丼、いや牛めしです。ご飯が見えない所がポイント高いです。

2009年8月30日撮影

 白石駅到着です。横にはSL人吉車内で見掛けた沿線案内之図がありますね。

2009年8月30日撮影

 白石駅停車中のハチロクです。構内踏切から撮影しています。

2009年8月30日撮影

 こちらは一勝地駅です。SL人吉運転時にはホームに出店が出て来る日があります。一勝地産のお土産を中心に販売しています。

2009年8月30日撮影

 売店で買ったものの中に商品名を覚えていない品を発見。左下に写っている白玉+黒蜜の様な食べ物。島原名物の「寒ざらし」に似ていますが、それだと黒蜜部分がもう少し茶色っぽい透明に近いカラメルでないといけません。う~ん、困った。

2017年4月24日撮影

 終点人吉駅1番ホームに到着。2番ホームの列車は八代駅行普通列車。

2009年8月30日撮影

 人吉駅。ここから人吉の観光が始まります。

2009年5月23日撮影

 一勝地駅停車中の熊本駅行のSL人吉号。編成全部を写した写真はこれしか持っていません。

2009年8月30日撮影

 熊本駅行に乗った時だけ見られた、観光快速列車「あそ1962」(2006(平成18)年7月22日登場~2010(平成22年)12月26日運行終了)と同時入線が見られる時期がありました。

 個人的にはあそ1962を見るよりSL人吉を見るのが好きでした。(楽しくないとは言っていない。実際楽しいですし。)

2010年11月14日撮影

 …と言う訳で、あそ1962車内からSL人吉を撮影した動画です。もう手元に録画データが残っていないので、以前ニコニコ動画にUPした動画にリンクを張っておきます。乗客の皆さんのテンションが高めです。

2009年9月13日撮影

 鎌瀬駅~瀬戸石駅の球磨川第一橋梁を渡るSL人吉。令和2年7月豪雨でこの橋も流されて全壊してしまい、二度とこの姿を見ることは出来なくなりました。

2009年9月13日撮影

 上記の動画データは手元にありましたので、直接載せておきます。上の2つと違い音量が大きいのでご注意を。


リニューアル前のSL人吉号

 ここからはおまけです。リニューアル前の快速「SL人吉号」の紹介です。

 「SL人吉号」は、「SLあそBOY」の合間に運転されていた年数回しか走らない貴重な臨時列車でした。SL人吉号として走る理由は「里帰り」だそうで、58654が廃止後に展示されていた人吉市矢岳駅の人吉SL展示館から復活する際の条件だったそうです。
 実は矢岳駅にも里帰りしていますが写真がありません。しかし先日、YouTubeにて貴重な里帰り音声と写真がupされているのを見つけました。ここでこっそりリンクを貼っておきます。

 SLあそBOYからSL人吉になるまでの略歴は

 SLあそBOYとして復活した58654は最初はほぼ原型でしたが、水戸岡氏により深緑色に塗装変更→テンダー車(石炭と水を積む所)にあそBOYの大きなロゴが書かれる→前部連結器にカウキャッチャーが取り付けられる等 迷走(?)していましたが、最終的には黒色に金帯の落ち着きました。

2004年8月11日撮影

 「SL人吉号」の全景です。これから熊本駅2番ホームに入線します。

2004年8月11日撮影

 熊本駅発車前のSL人吉号。

2004年8月11日撮影

 2号車の車内です。写真手前の観葉植物を置いてある場所が、リニューアル後には棚(壁)になっています。

2004年8月11日撮影

 折り畳み式テーブルの2人席です。

2004年8月11日撮影

 こちらは固定式テーブルの2人席です。

2004年8月11日撮影

 4人席です。

2004年8月11日撮影

 ちょっとピントがあっていませんが、車内で買った軽食です。ウエスタンがテーマなのでピザとかバドワイザーが売っていました。

2004年8月11日撮影

 坂本駅で特急「九州横断特急」との交換中。もう見られない風景です。

2004年8月11日撮影

 鎌瀬駅~瀬戸石駅間の球磨川第一橋梁からの眺めです。

2004年8月11日撮影

 当時乗った時の指定席券と乗車券です。博多駅から大畑駅まで普通列車行くには、3つの普通列車(乗換回数2回という優れもの)が安くて楽で良かったです。

2004年5月11日撮影

 こちらが矢岳駅に併設されている「人吉市SL展示館」です。引退後の58654はこちらに展示されていました。一緒に展示されていたD51-170は今もここで眠っています。

2004年5月11日撮影

 D51-170です。

2022年10月29日撮影

 説明文は58654とD51-170の2つが掲示されたままです。